「秀がさ……わたしは笑ってるのが一番いいって、そう言ってくれてたから」



秀を想うと、今だって涙が出る。

きっと、簡単に泣ける。



今のわたしにとっては、泣くことの方が楽なのかもしれない。



「本当はね……泣きたいよ」



そう口にしただけで、涙はじわじわと浮かんできそうになる。



「でも、我慢じゃないの。わたしは……秀が好きだって言ってくれた、顔でいたいからさ」




秀が今見てるのは、泣いてばっかりのわたしの顔。


それを、秀は望まないってわかってる。





『俺のそばで笑っててください』





そうあの日記に書いた秀は、最後まできっとそれを願っていた。



笑った顔で、わたしがいること。



それを、秀はきっと望んでる。





「後悔してるんだ……」


「……後悔?」


「うん。もっと早く……言えてればよかったって。

いなくなっちゃうなんて……思ってなかったから。

ありがとうって……それだけでも言いたかった」





伝えたいときには秀がいない。



それだけがわたしの心残りだった。




自分の気持ちに素直になること。


それを、相手に伝えること。



そんな簡単なことがわたしには難しかった。





秀を失って、大切なことに気付かされた。