『発信音のあとにお名前――、もしもし? 亜希?』
えっ……秀?!
突然、留守電が流れていた電話から秀の声が聞こえた。
『……あれ?』
「あ……もしもし」
『……よかった、切れてなかった。ごめん、運転しててさ』
「あ、うそ、ごめん。電話、大丈夫?」
『だいじょぶ、停めたから』
「そっか……」
緊張する暇もなく秀と繋がった電話に、わたしの心臓はバクバクと大きな音を立て始める。
気持ちを落ち着けるために、ゆっくり大きく冷たい空気を吸い込んだ。
『電話しようと思ってたんだ』
「あ、そうだったんだ。じゃ、ちょうどよかった」
『……あれ? 今日も外?』
「え、あ、うん。外だよ」
わたしの話し方は思いっきりぎこちない。
何て切り出そう……。
それを考えながら空を見上げる。
「……今ね、この前……会ったとこにいるんだ。クリスマスに……会った場所。そっちは……今、どこにいるの?」
『俺? 俺は……海が見えるとこにいる』
「……じゃあ、同じもの見てるんだね」
どこまでも続く海の向こうで、秀も同じものを目にしてる。
都会の海を見ながら、わたしはそんなことを思った。
「あのね……」
『……うん』
「わたしね……」
ちゃんと……
伝える……。
秀に……
あたしの、今の気持ち……。
「全部……思い出した。記憶……戻ったんだ」
『え……』