一言で言えちゃう好きって気持ちは……つまらない……。



志乃さんのその言葉はわたしの心に強く響いた。



好きって言葉じゃ簡単すぎる。


志乃さんの言ったことが今のわたしにはよくわかる。



何がどう好きで、どこが一番好きで、そんなこと言い出したらきりがない。



一言じゃ……まとまらない……。



着々とアートが続けられた爪は、薬指が終わって最後の小指に入るところだった。



「……だからさ」


「……?」


「もし、亜希ちゃんにそんな人がいるなら……そのまま言いたいこと並べればいいと思うよ? わたしもそうだったから」


「言いたい、こと……」


「そっ。いいじゃん? きれいにまとまらなくても。滅茶苦茶になっちゃってもさ」



きれいにまとまらなくても……


滅茶苦茶でも……いい?



「それで志乃さんは、」



そう言いかけたとき、志乃さんの薬指が目に留まった。


一粒のダイヤを小さめのメレダイヤが囲む、可愛いリング。



あれって……エンゲージリングってやつ?



それを見て、わたしは志乃さんにしようと思った質問を呑み込んだ。



“ちゃんと自分の気持ちが伝わった?”



そんな質問、野暮すぎると思った。



ちゃんと伝わったから、志乃さんは今、幸せなんだ……。