「アワキといい事あったの?」

教室について、
一限目の準備をしてから
窓の外を眺めていた時。

親友である野川凛の顔が
視界いっぱい広がった。

「えっ、なんでアワキくんが出てくるの?!」
「文が朝から嬉しそうな顔してるってことは、
あいつしかないんだもん」
「そんなことない、と思うけどなあ…」

「あるよ」と、私のつぶやきに答えて、
凛は自席にリュックを下ろした。

“アワキ”くん とは、端的にいうと、

私の好きなひと。


あのマフラーの出来事があった翌日、
学校へ向かうためバスに乗っていると、
今日と同じあのバス停から彼が乗ってきた。

見間違えかと思ったけど、
マフラーはやっぱりお揃いで、
バスを降りた時に尋ねると
やっぱり本人だった。

あの日『見たことある』と思ったのは、
きっと毎朝なんとなく見かけていたからだ。