『保川~ 保川~ 』
バスが停まって、たくさんの人が乗ってくる。
私はいつもと同じ、乗り口のよく見える席から
彼を探す。
暖かい車内とは真逆の冷たい空気が
外から入ってきて頬を撫でる。
…今日は休みなのかなあ。
そう思った刹那、
最後の乗客が入ってきてドアがしまった。
車内はぎゅうぎゅうで、
必然的に彼は私の目の前に立つことになる。
バスが揺れて彼の手が、
私の前の手すりを掴んだ。
「あ、おはよ」
「っおはよ…」
冷たい空気が遮断されたからか、
好きなひととの距離が近いからか、
私は、体温が上がっていくのを感じた。