「で、どうだった?一人立ちの、初の授業は」

先生の手が、ぽんっと頭に触れた。


「あ…はい。なんとかー…1年生はやっば落ち着きがなくて一時はどうなるかと思いましたけど、先生のおかげもあってなんとかー…」

「俺のおかげって、俺は何もしてないよ」

「いえ…あの時先生が来なかったら、あのまま授業が進めれなかったと思います。ありがとうございました」

座ったままだが、頭を下げた。


「いやいや…。逆に、俺がでしゃばって悪かったなって後で反省したよ。俺が行かなくても、妹尾先生を庇ってくれる生徒がいたし」

「え…あ…及川くんのことですか?」

私と先生の間に割って入った男子生徒の名前。

「あぁ。及川と何かあったのか?」

「え?いや…特に何もないので、今日庇ってくれたのがビックリというか…"高橋先生に怒られたら、いつでも言ってよ"って言ってくれて」

その言葉が嬉しかったのか、思い出すとまた笑みが出てしまう。

「俺は悪者か?及川のヤツ…」

「ふふ。大丈夫ですよ。高橋先生は怒ったわけじゃないってことは、ちゃんと伝えましたから」

「いや、たぶん伝わってない。違う意味でアイツは言ったから」

「?」

「ライバルは増えるばかりかー…」

高橋先生の大きな溜め息が出る。