「はぁー…疲れたー」


全ての授業を終え、放課後の中庭。


高校時代と全く同じ場所に座り、腕を空に向かって上げ伸びをする。


「お疲れ様です。妹尾先生」

「!」


頭上から声がしたと思ったら、缶コーヒーが降ってきた。

「ちょっと休憩しましょうか」

「先生!じゃなかった……高橋先生」

「あはは!いいよ、もう生徒いないから。昔みたいに先生で」

そう言うと先生は、窓をひょいっと通り抜け隣に座った。


「ふふ」

「なんだよ?」

「先生も変わってませんね」

「?」

「私が高校生の時も、そうやって窓を通り抜けてましたよね」

「あぁ…そうだったな。妹尾が卒業してからは、中庭に来ることはほとんどなかったけど、たまにこうやって窓を通り抜けてたら主任に注意されたよ。"生徒がマネするからやめてください"って」

「あはは」


笑い声が中庭に響き渡る。