リビングの隣にある和室の襖を開けると、お父さんが座って待っていた。
「お父さん、高橋先生と泰葉が来ましたよ」
「あぁ」
返事はしても、こっちを見ようとしない。
「今日は朝からあんな感じなのよ。きっと、泰葉たちよりも緊張してるのよ」
お母さんはコソコソそう言うと、リビングへと行ってしまった。
お父さんはまだ、こっちを見ようとしない。
「お父さ……」
「初めまして。せの…泰葉さんと同じ高校で数学教師をしています、高橋一樹です。本日は夜分遅くに時間を作っていただき、ありがとうございます」
先生ー…
お父さんはー?
「…あぁ。こっちに座れ」
まだこっちを見ようとしないが、やっと喋ってくれた。
「失礼します」
先生は頭を下げると、和室へと入った。