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「おか…さ…ん」




あの日から4日後



私はうまく話せなくなった。


お母さん

そう普通に言ってるはずなのに

上手く回らない私の舌。



「なーに?」


マフラーを編みながら私の声に答える。



「せ…せ…いは?」


先生は?




お母さん、
そう言ってるよ私。





「先生ね〜、今日は少し遅くなるって」



多分、他の人だったら

『なに言ってるの?』

って思ってしまう喋り方でも

私の言ってる事を理解してくれる。





天井を見つめて目を瞑る


真っ暗で嫌な感じ。


私からちょうど見える大きな時計


その針は16時を指していた



なにもすることのない毎日。



私を少しずつ蝕んでく身体



夢の中で大きな声で笑う私



起きた時に現実に戻させる。



弱くなったね、私。




「ねぇ、愛菜〜」


少し低いトーンで話しかけてくるお母さんが私の手を少し握ってきた。



「お母さんね、愛菜に言いたいことがあるのよ」



ギュウッと握ってくるお母さんの手。



「お母さん、もぅ39歳でしょ?
でもね…」


握っている手をお母さんのお腹にそっとあててくる。


「妊娠したのよ。」





…え?



「まだこのぺったんこのお腹だけどね
いま2週目だって」





安心した。

嬉しかった。

私がいなくなってもお母さん達は悲しくならない…


これは神様からのプレゼントなのかな?


「おめ…で……とっ」


お腹を少し撫でる私の顔はきっと最高の笑顔なんだろう。




お母さんは私の手を離して
もう1度、マフラーを編み始める。