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「戻るんですってね。自分の家に」

「はい」

その日の午後、私はスーツケースに荷物を詰め終えてカグヤさんを振り返った。

ドアに身を預けて腕を組む彼女は、ニコリともせずに私を見据えている。

そんな彼女にペコリと頭を下げて、私は口を開いた。

「人狼族の方々には色々とご迷惑をかけてしまってすみませんでした。本当にごめんなさい。それから……お元気で」

私がそう言うと、カグヤさんは少し驚いた顔をしてから、僅かに視線をさ迷わせた。

「……綺麗ね。その指輪」

話題を変えたかったのか、カグヤさんが私の指に視線を落としてそう言ったから、私はその指輪を反対の手で撫でながら答えた。

「マリウスに……もらったんです」

カグヤさんが息を飲んで私を見つめた。