私は咄嗟にマリウスの手を握った。

だって少しでも、マリウスを慰めたかったから。

「マリウス。あなたはきっといつかこの苦しみから抜け出る事ができるわ。だってあなたは偉大なるヴァンパイアだもの。私はずっと祈ってる。あなたがクリスティーヌさんに許されて、いつか誰かに愛される事を」

マリウスの切れ長の眼が次第に丸くなり、やがてそこから涙がこぼれ落ちた。

人じゃないからこそ、悔やむ気持ちも強いマリウスを思うと私の胸も苦しい。

「ありがとう。藍。いつかまた……私に会ってくれるかい?」

「うん、うん」

涙でマリウスの顔が歪んだけど、私は必死で眼を見開いた。

忘れないように。

燃えるような赤の瞳も、この美しいブルーグレーの瞳も。

その時、マリウスが私を強く抱き締めた。

「さよなら、藍。君は素晴らしい人だ。何といっても偉大なるヴァンパイアに愛を教えてくれたのだから。藍、ありがとう。君の幸せを、何処にいても祈っているよ」