戸惑う私の指にマリウスがゆっくりとその指輪をはめた。

それからマリウスはさらに続けた。

「ヴァンパイアという種族は感情の起伏が激しくてね。悲しみや喜び、怒りが強ければ強いほど、抑えるのが難しくなってしまうんだ。いつもはそこまで我を忘れたりはしないのに……あの時の私は深く愛し合っていると信じて疑わなかったクリスティーヌに刺された事で冷静さを失い、正真正銘の化け物になってしまった」

何と言葉をかけたらいいか分からない私は、ただマリウスを見上げるしかなくて、胸が苦しかった。

そんな私を、灰色がかった青い瞳が穏やかに見ている。

「魔女に会いに行ってくるよ」

「……魔女に？」

マリウスが軽く頷く。

「いくら偉大なるヴァンパイアでも、死者とは話せないんだ。だから魔女にクリスティーヌと話をさせてもらおうと思ってね。これまでは魔女に何を言われても聞く耳を持たなかったけど、君に出会って私の運命は変えることが出来そうだよ。こんなに時間がかかってしまったけれど……クリスティーヌは私を許してくれるだろうか……」