「どうして……?」

クリスティーヌの大切な形見を、どうして私に?

分からないけど……これは貰えない。

私は慌てて首を振るとマリウスを見上げた。

「クリスティーヌさんは、マリウスに持っていてもらいたいと思うの。だからそれは貰えない」

すると今度はマリウスがさらりとプラチナ色の髪を揺らした。

「実はね、お嬢さん。クリスティーヌも……『魅惑の血』の持ち主だったんだよ。だから私が魔女に作らせたんだ。魅惑の血を狙う者から彼女を守るために」

クリスティーヌさんも、私と同じだったなんて……。

マリウスが辛そうに眼を細めた。

「けれど彼女を殺してしまった私に、これを持つ資格なんかない。だから……君に持っていてほしいんだ、お詫びのしるしとして。これをすると魅惑の血の匂いを消せる。少しは危険から身を守れるから」