だって……私の頭の中に浮かんだその映像は、マリウスだったんだもの。

いつかテレビで見た、ベルサイユ宮殿のようにきらびやかな建物。

その中の、贅沢の限りを尽くした絢爛豪華な部屋の中で踊る男女。

ドレスに施された幾重にも重なったレースが、踊る度に風を含み羽根のように翻る。

マリウスが輝くように笑っていた。

美しい、それは美しい女性の背に両腕を回して。

優雅に舞う二人はとても素敵で、幸せそうだった。

愛が溢れて、輝いているように眩しい。

……待って。

こんなに幸せそうなふたりなのに、どうして……?

どうして彼女……クリスティーヌはマリウスを刺したの?

その時私はハッとした。

だって翠狼に肩を揺すられたから。

「藍、藍!」

翠狼の声は聞こえているのに頭の中の映像は止まらなくて、私はこれが夢じゃないってわかった。

これは、もしかして……!

もしかして、これは『ビジョン』なんじゃ……!?