「……!」

次の瞬間、飛びかかる翠狼を殴り飛ばそうとしたマリウスの腕をかいくぐり、翠狼がマリウスの首に噛み付いた。

「うっ!!」

翠狼の牙が深く突き刺さった首が不自然に曲がり、マリウスは眼を見開く。

「翠狼が偉大なるヴァンパイアを仕留めた!」

「翠狼!一気にやれ!!」

「やれ!翠狼!死に損ないの吸血鬼を灰にしてやれっ!」

部屋の隅で二人の戦いを見守っていた人狼族の仲間が興奮し、口々に叫んだ。

その声が修まるのを待つと、翠狼は鼻にシワを寄せてグッと顎に力を込めた。

バキッと骨が砕けるような音が耳に届いた時、マリウスの赤い瞳が徐々に虚ろになり、その輝きがくすみはじめた。