そんな私の傷に薬を塗りながら彼女はフワリと笑った。

「あなた、見かけによらず情熱的なのね。翠狼様と良く似てる」

翠狼と、私が……?

その時、地を這うような翠狼の声が響いた。

「マリウス!協定を破ったヴァンパイアの長として人狼族に謝罪するどころかお前は俺を怒らせた。覚悟しろ」

一方マリウスは、既に私といた場所から移動していて、そこから油断なく翠狼を見据えていた。

「おや、これはこれは騒々しい登場だね。獣はやたらと群れを作るが、人狼もしかり」

言いながら、自分を取り囲む人狼達を見回して溜め息をついた。

「ああ……人間の魅惑の血も堪らないけれど……人狼の魅惑の血はその上を行くね。君が入ってきただけで部屋中に匂いが充満しているよ」

言い終えると彼は私の血で濡れた口元を手の甲で拭った。

マリウスはニヤリとして続ける。