私は狙いを定めると、大きく両腕を上げて一気に心臓へと振り下ろそうとした。

でも、でも……!

「……うっ……!!」

「……どうしたの?怖い?」

振り下ろした短剣で左胸を貫く事ができず、私は震える両腕になす術がなかった。

電流が走るように鋭く胸が痛む。

出来ない……怖くて出来ない……!

そんな私を見下ろしてマリウスが少し唇を舐めた。

「ああ、血が……魅惑の血が……もったいない……」

俯いて見てみると、私の胸元の服は裂け、切っ先に傷つけられた皮膚が裂けて血が出ていた。

マリウスが大きく息を吸って、うわ言のように口を開く。

益々私を見るマリウスの赤い瞳が、燃え盛るように光った。

「ああ、この薫り、堪らない。君が出来ないなら私に身を委ね、愛のために身を捧げるしかない……!」

「きゃあああっ!!」

マリウスが、噛んだ、私を。