綺麗……でも、怖い。

テーブルに置いた短剣をマリウスはどこか哀しそうに見て、掠れた声を出した。

「……刺して」

ちゃんと聞こえていたし、理解できた。

マリウスは私に、これで自分自身を刺して翠狼に対する愛を証明しろと言っているのだ。

「大丈夫。心臓を刺しても、死ぬ前に蘇らせてあげるから。君が、彼への愛を証明出来たら私は君を妻にして永遠の命を授けてあげるよ。人狼の命と引き替えに」

言い終えたマリウスは、いつの間にか手に持っていた紙をテーブルに広げて、サラサラとペンを走らせると私に見せた。

「……これは……誓約書。後で人狼に届けるから」

私はそんなマリウスに、一つだけ聞きたいことがあった。

「マリウス……この短剣はもしかして、彼女があなたを刺した……」

マリウスが笑った。