マリウスのこの言葉を聞いて、ようやく張り詰めていた緊張が解けていく気がした。

「ありがとう……ございます」

私の言葉にマリウスが眉を寄せた。

「ありがとう?そんな事、言っていられなくなるよ」

言い終えたマリウスは、マントの下に腕を入れるとソッと何かを引き出した。

それを見て、私は息を飲むしかなかった。

だってきらびやかなシャンデリアに照らされたそれは、銀色に光る柄を持つ短剣だったんだもの。


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呆然と、私はその美しい短剣を見つめた。

鞘には数種類の宝石が埋め込まれ、それが部屋の明かりを取り込むように発色している。

そんな美しい宝石の周りには月桂樹を思わせる葉が浮き彫りにしてあり、柄の部分にも同様の模様が刻まれていた。