マリウスはここで言葉を切ると、深い溜め息を漏らした。

それから一度伏せた眼を上げて私を見ると、唇の両端を引き上げて笑った。

その邪気を含んだ赤い瞳にゾッとして、私はガタンと椅子を鳴らした。

「試させてもらうよ。愛をしている君を」

アイヲシテイルキミヲ。

私……死ぬかもしれない……。

今頃になって実感が生まれてきたけど、私の決心は揺らがなかった。

「いい眼だね、君」

マリウスはゆっくりと立ち上がると、長いマントをサラリと揺らした。

「けれど、口では何だって言えるものだよ。人は……口だけなら簡単に愛や永遠を語る。それがたまらなく腹立たしい。……君が口だけではなく本当に翡翠の眼のあの人狼を愛しているのなら、彼の事は殺さないと約束するよ」