「君も貴重だけど……魅惑の血を持つ人狼は、もっと魅力的なんだ」

「……っ!!」

心臓を鷲掴みにされた気がして、私は思わず椅子から立ち上がった。

「やめて……!」

取り乱した私を見てマリウスが、興味深げにキラリと瞳を光らせた。

「あの翡翠のような瞳の人狼……彼は実に興味深いけど……君は彼のなに?」

彼は……翠狼とは……。

私はユルユルと首を横に振った。

「私は……彼にとってなんでもありません」

強ばる私を見て真顔でマリウスは続けた。

「じゃあ、方向を変えて……彼は君のなに?」

マリウスはサラリと銀の髪を揺らして私を見上げている。

彼は、私の……。

私は少し息をはくと、自分の心をつめるために両目を閉じた。