「もしもあなたが私以外の誰かを求めているのだとしたら、私を代わりにして欲しいんです。私で……許してください」

笑みをたたえていたマリウスがゆっくりと真顔になり、やがて唇を引き結んだ。

「お願いします!私で許してください」

「仲間になるということは……少なくとも人間じゃいられないって事だよ。もっと言えば」

マリウスが少し困ったように笑った。

「私の糧となって死ぬか……あるいは結婚して夫婦になるということなんだよ。わかるかい?」

小さく頷く私を見てマリウスがホッと息をついた。

「確かに、魅惑の血をもつ君は希少価値だ。百年間さがし続けても出逢えるかどうか分からないほどにね。でもね」

マリウスが一旦ここで言葉を切ると、至近距離から私の眼を見据えた。

彼の灰色がかった青い瞳が、静かに赤みを帯びていく。