ユルユルと、私の心の中の硬い殻のようなものがひび割れ、それがボロボロと崩れていくような気がした。

「翠狼……私、迷惑じゃない?」

翠狼が、私を抱き締めたまま、答えた。

「ちっとも迷惑じゃない」

胸がジワジワと太陽の熱を感じたように暖かくなってゆく。

「私の事、嫌じゃないの?だって私、誰からも好かれてなくて、」

「そんなのは、お前の思い込みだ」

でも、だけど……。

「……」

「じゃあ、試してやる。来い」

「え?きゃあっ」

言うや否や、翠狼は私を抱き上げると図書室の引き戸を足で開けた。

とたんに人払いのために立っていた仲間が振り向き、

「翠狼、そろそろ結界を解くぞ」

「ああ」

短い会話をおえると、翠狼はそのまま廊下を突き進んだ。