でも、すぐに夢じゃないと分かった。

何故なら、翠狼に左の頬をぶたれたから。

「……っ!」

一瞬何が起きたのか分からなかったけど、私を見下ろした翠狼は凄く怒っていた。

「二度と人間の女に手をあげないと瀬里に約束していたが、今はそれが守れない」

少しだけ違和感のある頬に手をやりながら硬直する私を見て、翠狼が怒鳴った。

「どれだけ心配したか分かってるのか!」

大声に身体がビクリと震える。

「俺がどれだけ心配したか……!」

言うなり翠狼は私を荒々しく引き寄せて胸に抱いた。

「なにが『律と行く』だ!バカか、お前はっ!」

ギュッと私を抱き締めた翠狼の身体は温かくて、私は息をするのも忘れた。

「翠、狼……」

「……」

心配してくれたの?こんな私を?

出会って日も浅い私を、あなたは腹が立つ程に心配してくれたの?