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気を失ったのはほんの数分のようで、気がつけば私は人に戻った翠狼に抱き抱えられていた。

場所はまだ図書室だったけど、私の目の前には瀬里がいて、翠狼は脇に立っていた仲間らしき人に指示を出していた。

……見たことのある人だ。確か、教会で……。

「藍ちゃん……」

瀬里の声で翠狼が私を覗き込んだ。

「海狼、後は任せた」

海狼と呼ばれた人が無言で頷き、翠狼が瀬里を見下ろした。

「瀬里、俺は藍を連れて帰る。お前は白狼に報告を頼む」

「分かった。じゃあ藍ちゃん、後で行くからね」

僅かに頷くと、瀬里は少しだけ笑った。

「歩けるか?」

翠狼の問いかけに、私はうん、と返事をした。

……派手な音がしたわりには乱闘の形跡は感じられず、私はさっきの出来事が夢なんじゃないかと思った。