眼を見張る私の前で、律の瞳から徐々に赤みが消えていった。

ルビーのような瞳がその輝きを失う頃、律がフワリと笑った。

「……藍、藍」

「り、つ」

翠狼が大きく口を開けた。

「うっ!」

涙で辺り一面が滲んだ。

ギュッと両目をきつく閉じたけど、律の呻き声は私の耳に届き、それが私に、彼との別れを告げていた。

律……律。

もう、力が残っていなかった。

身を起こして立ち上がろうとしたのに、気力も体力も私の中から全てなくなってしまっていた。

さよなら……律。

私は身体を起こすのを諦めると、頬にカーペットの感覚を感じながらゆっくりと眼を閉じた。