「は、はなせっ!やめろっ!」

律の絶叫が響き渡り、私は心臓が止まりそうになりながら二人を凝視するしかなかった。

翠……狼……!

口を覆った両手が小刻みに震え、止めることができない。

なんと視線の先には、狼に姿を変えた翠狼が律の背中にのしかかり、今にも彼の首に噛みつこうとしているところだったのだ。

「嫌だ、止めてくれ……!」

血を吐くような律の声が私の耳にも届いた。

直後に翠狼が低い声を出す。

「もう手遅れだ。これは人狼とヴァンパイアの因縁だ。咬まれた方が死ぬしかない」

律がギュッと眼を閉じた。

「嫌だ……灰にはなりたくない……」

「恨むなら人狼との協定を破った己を恨め」

ゆっくりと眼を開けた律の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。

それから彼の眼が私を見つめる。

「せめて藍には……見られたくない……」

律……!