律がそんな翠狼を鼻で笑った。

「所詮、お前も人ならざる者。なにが覚悟だ。何が守るべきものだ!カッコつけてもお前だって化け物だ。人狼とヴァンパイアは同じなんだよ」

律が笑ったのが声で分かった。

「覚悟しろ。その美味くない血を身体から絞り出してやる!」

低く身構えた翠狼が、一瞬私の視界に入った。

翡翠の瞳が一層濃く光を放っていて、私はその鮮やかさに圧倒されて瞬きを忘れた。

「うわあああっ!」

翠狼が地を蹴った直後、律が叫び声をあげドスンと床が揺れた。

……律……!

歯を食い縛り、顔をしかめて漸く身を起こした私の眼に、息を飲む光景が広がっていた。

翠狼……!