「……藍は、渡さない」

「ならばここで灰となり、その身を風に散らすがいい!」

深紅の瞳が濃くなると同時に、翡翠色の瞳もまた鮮やかに光る。

「きゃあああっ!!」

瞬く間に狼に姿を変えた翠狼が、物凄い勢いで律に飛びかかり、律がそれに応戦するために私を素早く突き飛ばした。

ヴァンパイアである律の早さと力の強さに耐えられず、私はテーブルに腰を強打して倒れた。

痛い……身体に……力が入らない……。

でも、でも……翠狼が……!

ガタン、ドタン!と、普段の図書室からは想像もできないほど激しい音が響き、私は必死で身を起こそうとした。

「クソッ!」

律の荒い息が次第に大きくなり、翠狼の声が響いた。

「俺がお前に負けるわけがないだろう。お前と俺では胸に抱く覚悟も、守るべきものの大きさもまるで違うんだ」