私の言葉に、翠狼が憮然として口を開いた。

「瀬里から頭脳明晰だと聞いていたが、さほどでもないようだな」

思わずコクンと喉が鳴る。

それから翠狼が視線の行方を律に変えて続ける。

「沢村律。先日はとり逃したが、今日はそうは行かない。お前はもう存在しないはずの者だ。潔く死ね」

律が思い出したかのように声を荒げた。

「よくも清雪様を殺してくれたな!!お前のせいで『無敵のヴァンパイア』への道が絶たれたっ!」

「かりにも自分を救った者の命を奪い、高みを見ようとするとは……お前のその野望はすべてのヴァンパイアを地に貶める行為だ」

「他のヴァンパイアなんてどうでもいい!俺はもう『魅惑の血』から解放されたいんだ!」

昼下がりの図書室にはそぐわない、荒々しい律の声が響く。