「俺がどうして人間と同じ事をしなきゃならないんだ。よく考えろ」

「……!」

耳元で律の歯軋りが聞こえる。

そんな律に、翠狼は低い声でこう言った。

「藍を離せ」

翠狼の言葉の直後、律が私に強く囁いた。

首に回された律の腕が小刻みに揺れて、彼の動揺が私にも伝わる。

「早くこの狼に言うんだ。私は律と行くと!」

首筋を圧迫されて顔が熱くなる中、私はもう一度考えた。

……そうだ、私は……翠狼にはもうこれ以上甘えられなくて、迷惑で……。

心臓がドクドクと物凄い早さで脈打ち、喉の奥が締め上げられたように苦しくて痛い。

私は震えそうになる声を必死で抑えながら翠狼に話しかけた。

「翠狼、私は律と行く。もう決めたの」