マリウスって、確か……。

あっ!

胸に稲妻が走ったような衝撃の中、私は翠狼と共に律を追い、廃墟ビルに忍び込んだ時の様子を思い出した。

『清雪様、とうとうマリウスが来日しました』

『……そうか。ではそろそろ準備にかからなくてはならないな。Fascinating bloodの準備は整ったのか』

そうだ。あの時律が確かに清雪とこう話していた。

目まぐるしく考える私の腕を、律が引き寄せた。

「本当はね、清雪様にマリウスを殺させたあとで彼の血を飲み、俺は『無敵のヴァンパイア』になる予定だったんだ。でも彼は死に、その計画は絶たれた。だからマリウスに取り入るしかなくなったんだ。
ファシネイティングブラッドは世界的に見ても貴重だから、藍を捧げようと思ってる。
そしたらマリウスが俺を仲間にしてくれるかも知れない。『無敵のヴァンパイア』にはなれなくても、マリウスに守られる」