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学校の中は安全。

漠然とそう思っていた私は、図書室に一歩入って硬直した。

図書室の北側半分はすべて本棚で、南側半分には八台のテーブルが置かれている。

その真ん中のテーブルに、信じられない人物が座っていた。

それもひとりの女子生徒の首に腕を回して。

「会いたかったよ、藍」

私を見てそう言った律の唇から、一筋の赤い線が顎に向かってゆっくりと垂れた。

……嘘。もしかして、この女の子の血を……!

息を飲む私の視線を察して、律はグイッと手の甲で唇を拭った。

「大丈夫だよ、死ぬまでは飲まない。舞ちゃんだっけ?」

「うん……」

舞と呼ばれた女子生徒が、虚ろな眼差しで天井を見上げた。

「ほら、傷口拭いて。すぐ塞がるからね」