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登下校は毎日、翠狼が車で送り迎えをしてくれた。

校内では瀬里がいつも一緒だし、安全だった。

でも……私が嫌なのは、夜だ。

独りぼっちの広い部屋は、怖くて眠れない。

それに、寂しい。

翠狼の家で暮らすようになった初日は瀬里が泊まりに来てくれたけど、彼女も色々忙しいらしく連日の外泊は無理みたいだった。

翠狼は私の生活に合わせてくれているみたいで、私が下校するとそのまま家で過ごした。

けれど、それが私の心を重くした。

だって物凄く忙しそうだから。

書類の山とひっきりなしにかかってくる電話。

ダイニングテーブルで仕事をこなす彼は決まって午後11時にこう言った。

「藍、部屋へ行ってもう寝ろ。俺はもう少しここにいる」

嫌だった。

でも、聞き分けのない子供だとも思われたくない。

とてもじゃないけど寂しいとか、怖くて眠れないなんて翠狼には言えなかった。