「お前の事は俺が守るから、心配しなくていい」

ドキンと鼓動が跳ねて、私は翠狼の男らしい顔を見つめた。

「……うん……」

「それからひとつ言っておくが」

急に翠狼が少し厳しい口調でこう言うと、私から離れた。

「これからは抱きつくな」

ドキドキしていた心臓に冷水をかけられたような気がして思わず体が硬直した。

……嫌がられてしまった。

あまりにも必死で……私……。

「……ごめん……」

……私はコクンと頷いて彼を見上げた。

分かってる。あんなこと言って、そう簡単に許されるわけないもの。

「もうしない」

そう言った私をチラリと見た後、翠狼は踵を返してドアに手をかけた。

「出掛ける用意をしておけ。荷物を取りに行くぞ」

「うん……」

私は均整のとれた翠狼の後ろ姿を見つめながら、頷くしかなかった。