私はあの時、凰狼と呼ばれた褐色の狼が清雪に飛びかかった光景を思い出しながら律の言葉を思い返した。


『清雪様を殺すことにしたよ』


仮にも自分を救った者を殺すと言った律。

そんな律と同じ化け物だと、翠狼をなじった私。

再び後悔という名の波が私を襲った。

胸が痛くて痛くてたまらない。

分かってもらいたい。この気持ちを、ちゃんと知ってもらいたい。

「翠狼」

背伸びをして翠狼の首に両腕を回した私に、彼が焦って身をよじった。

「っ、こ、こら、離れ……」

「嫌だ、離れない」

私は首を横に振ると、彼を抱き締めた。

「翠狼、翠狼。傷つけてごめん」

「……藍」

静かな声に呼ばれて、私は彼の首に回していた腕を解いた。

途端に切れ長の綺麗な眼が私を捉える。