***

十分後。

私を見て雪野一臣がニヤリと笑った。

「話はついたぞ。荷物を取りに行くから下に降りろ」

……信じられない。

なんと雪野一臣は、本当にママに承諾を得てしまったのだ。

私と同居する件について。


『わが社の食品部門の社員五千人の制服デザイン依頼の契約を交わす条件として、お嬢さんと同居させていただきたい。私は彼女の頭脳の高さをかっております。つきましては私の従妹に勉強を教えていただきたいのです、つきっきりで。はい。従妹は藍さんとクラスメイトでして、これは受験勉強にも繋がるかと』


私は、ママに臆することなくこう言った雪野一臣を呆気に取られて見つめた。

「あの、ママは本当に同意したの?」

「契約書にサインすれば一億の金が動くんだぞ。二つ返事で了承した。それから」

雪野一臣は私を見て再び口を開いた。