「別に俺が携帯番号を調べてかけてもいいが、同じ結果が十分遅れるだけの事だ」

「……無理」

私が拒否るのを予測していたのか、彼はあっさりと腕を引き、画面をタップした。

片手をパンツのポケットに突っ込み、もう片方で持った携帯電話を耳に当てた雪野一臣はモデルみたいで、こんな状況にも関わらず私は見とれた。

「俺だ。アサキ・マツシタの携帯電話番号を調べろ」

松下朝樹はママの名前だ。

本当にママに許可を取ろうとする雪野一臣に息を飲む私と、そんな私を無言で見据える彼。

程なくして雪野一臣の携帯電話が短く鳴った。

それに眼を通した彼が、再び携帯を耳に当てた。

「もしもし、わたくし雪野グループの雪野一臣と申しますが、アサキ・マツシタさんの携帯電話ですか?はい。初めまして。実は、私が社長を務めております雪野フーズの制服を一新したいと考えておりまして……」