美久がまさとに出会ったのは、高校の入学式が初めだろう
私から見れば二人は、其れほど仲の良い間柄では無かった

当時美久は、幼馴染みである大学生の小山 優と恋人関係だった

「恋人って言っても、優さんは大学生でこれから就活とか色々あるし、大学も県外で中々会えなくて」

溝は深まる一向だったのだろう
去年の冬、別れたらしい

「当時から相談とか良く聞いてくれて、別れた原因はそれかも」

何となく、美久が別の人に惹かれていたのを山下さんは気づいていたのかも知れない

美久の気持ちを汲んでくれた彼の対応は大人と言えるモノだろう

「真衣ちゃんは、何か聞いてない?」

「いや、なにも・・・」

ウソを付く他無かった
美久もまさか自ら墓穴を掘ったとは思ってもいないだろう

2年になってクラスが別れ、それでも美久は想い続けたのだろう

私の言っていた“噂”というヤツは
《中村 まさとは清水 茜と付き合っている》
という噂

「振られるの覚悟でアタックしたけど自信無くて」

「まあ、そうだよね。小山先輩の事は良いの?」

何となく、然り気無く話題を反らす
美久は気まずそうに小声で話す

「うん、確かにあの人の事は好きだけど迷惑掛けたくないの」

多分これからの就活の事だ
自分のせいで相手の将来を揺るがす事を良くしていないのだろう

















取り敢えず、返事は夏休みが終わるまで待ってもらうという結論になった
あまり考えたくはないが、私には分かる

きっと、皆がハッピーエンドで終わるような出来事ではないだろう

「・・・・もしもし、千代、明日暇?」

自分だけこんな思いをするのは釈然としない、ならば

「面白い話があるんだけど」