湖坂は進める。

「で、兄貴は鼻がいい。

遠くの匂いをかぎ分けられるのはもちろん、

物質名まで正確にわかる。

そして人の匂いまで判断し、

誰が近づいているかも正確にわかる。」


「・・・。」

また言葉を失った。

「まだ終わってねぇよ。

実はもう一人いるんだ。

お前と同じ中学校にいるだろ?

綾瀬壟泪。(あやせ るい)あいつも、メンバーだ。

能力は目。半径五百メートル以内はすべて綾瀬の目が行き届いて、

距離感が抜群に測れている。どうだ?いける気しねぇか。」


通りでこの自信ね・・。確かに、

「で?どーすんだ?」

湖坂は急かすが、一向に私の答えは見当たらない。

「・・・・・。」

「別にやらなくても構わねぇ、

命はねぇけど。それにてめぇさ、居場所ねぇだろ?」

あぁ、図星です。

「・・・。」

「どうする?ボッチ野郎。」

「・・。」

「早くしろ、クズ」

急かし続ける湖坂に私は重たい口を開いた。

「急すぎるし、無理にもほどがある。時間くれない?」

「何言ってんだ、その間にあんたがばらしたりしたらどうする?

犠牲者が増えるだけだ。」

湖坂の顔は当たり前だといって、動こうとしない。

「そのくらいで、人を殺さなくてもいいじゃない。」

「馬鹿か。どれだけ危険な事か分かってんのか?

俺らの身も考えろ。

永遠の口封じくらいして当然だろ。」

それはそうか・・。なら、

「盗賊団は人殺しはやるの?」

「っんなもん、やらねぇよ。」

早く答えられるわけがない。

問題が大きすぎる。私の中で湖坂の発言がぐるぐると木霊する。

確かに湖坂の言っていることはすべて図星、

そして真実だと思う・・・。

けど・・・。




「どーだ、俺らに力を貸してくれねぇか?」


湖坂は優しく投げかけた。

私は湖坂の目を見つめた。