プロローグ
「・・・お待たせいたしました。こ、こちらが例のものです。」
地下の薄暗い駐車場。
黒いセダンが妙に熱を持ったぬるいアスファルトの上を滑ってきて、
ゆっくりと赤いランプを光らせ停車した。
中から人が出てくる気配もなく、
三十代前半くらいの男がおぼつかない手つきで
車の中の人に何やら黒いケースを差し出していた。
「ほぅ、よかろう。熊田君にもよろしく伝えておいてくれ。
さぁ、こちらも用意しているものを渡せ。」
後ろの席に乗っていたのは小太りの白髪の男性。
男は満足したような目で黒いケースを眺め、
助手席に乗っていた男に合図を送る。
すると助手席に乗った男が出て来て三十代くらいの男に向かってシルバーのケースを開いた。
カシャン・・・・
地上では熱い炎天下のせいで、
サウナ状態の静寂な地下に金属がアスファルトを叩きつける音が響く。
シルバーのケースの中に入った福沢諭吉の黒子の多さ、
いや、
札束の量を見て驚いた老人が鍵を落としたのだった。
その瞬間、
鉄柱の陰にいた老人は我に返る。
私は好きで黒子を眺めていたわけではない。
偶然遭遇してしまったのだから罪はない。
そう、
自分に言い聞かせていた。
しかし、
その男たちは心の広い集団ではなかったようだ。
「誰だっ!」
「・・・お待たせいたしました。こ、こちらが例のものです。」
地下の薄暗い駐車場。
黒いセダンが妙に熱を持ったぬるいアスファルトの上を滑ってきて、
ゆっくりと赤いランプを光らせ停車した。
中から人が出てくる気配もなく、
三十代前半くらいの男がおぼつかない手つきで
車の中の人に何やら黒いケースを差し出していた。
「ほぅ、よかろう。熊田君にもよろしく伝えておいてくれ。
さぁ、こちらも用意しているものを渡せ。」
後ろの席に乗っていたのは小太りの白髪の男性。
男は満足したような目で黒いケースを眺め、
助手席に乗っていた男に合図を送る。
すると助手席に乗った男が出て来て三十代くらいの男に向かってシルバーのケースを開いた。
カシャン・・・・
地上では熱い炎天下のせいで、
サウナ状態の静寂な地下に金属がアスファルトを叩きつける音が響く。
シルバーのケースの中に入った福沢諭吉の黒子の多さ、
いや、
札束の量を見て驚いた老人が鍵を落としたのだった。
その瞬間、
鉄柱の陰にいた老人は我に返る。
私は好きで黒子を眺めていたわけではない。
偶然遭遇してしまったのだから罪はない。
そう、
自分に言い聞かせていた。
しかし、
その男たちは心の広い集団ではなかったようだ。
「誰だっ!」