「……そうだったの?……私、てっきり、しょーりさんは、子供が嫌いなんだと思ってたわ。」
「白々しい。めっちゃ仲イイやん。」
美輪があけりを睨んでそう言った。
あけりは、ぶるぶると首を横に振った。
「一緒に暮らしたのって2年足らずなんだけど、完全に無視されてたわよ。……だから、しょーりさんの気を引きたくて、自転車競技始めたんだもん。一緒にバンクで練習は無理でも、街道には連れてってくれるかと思って。……いっつもあっさり置いて行かれたけど。」
美輪のあけりを見る目が変わった。
「……自分も、自転車乗ってたん?」
この場合の「自分」は二人称で、あけりのことを指している。
泉と同じように、美輪も、相手のことを「自分」って呼ぶことが、あけりにはほほえましく思えた。
「ええ。中2まで……ちょうど、今の美輪ちゃんの歳までかな。病気に罹って乗れなくなっちゃったけど。……自転車は諦めざるを得なかったけど、しょーりさんのことは忘れられなくてね……今、こんな風に、普通に話せることが、うれしくてうれしくて。全部、薫さんのおかげ。」
あけりはそう言って、薫にほほ笑みかけた。
薫は苦笑して、肩をすくめて見せた。
「タイミングがずれてたら師匠が舅だったのかと思ってたけど……最悪の場合、師匠に君をかっ攫われてしまうって可能性もあったんだな。」
「……何で、自分ら2人とも……あんなヒトデナシのこと、そんなに慕ってるん?」
美輪の吐いた暴言に、あけりは眉毛をぴくりと上げたけれど、薫は鷹揚に笑った。
「師匠、優しいんだよ、あれで。口が悪いから誤解されやすいけど。……そういうところも、君と似てるね。さすが親子。」
「……。」
くやしいけど、美輪は、泉に似ている自覚があった。
反論できない美輪の瞳に涙が浮かんだ。
あけりの胸がきゅんと疼いた。
美輪の気持ちがわかりすぎるほどわかるような気がして……あけりは、とても他人事とは思えなかった。
その後、しばらく泉は姿を見せなかった。
以来、真面目に自転車の勉強を始めた美輪は、泉の訪れを楽しみにしている面々に申し訳なさすら感じ始めていた。
「白々しい。めっちゃ仲イイやん。」
美輪があけりを睨んでそう言った。
あけりは、ぶるぶると首を横に振った。
「一緒に暮らしたのって2年足らずなんだけど、完全に無視されてたわよ。……だから、しょーりさんの気を引きたくて、自転車競技始めたんだもん。一緒にバンクで練習は無理でも、街道には連れてってくれるかと思って。……いっつもあっさり置いて行かれたけど。」
美輪のあけりを見る目が変わった。
「……自分も、自転車乗ってたん?」
この場合の「自分」は二人称で、あけりのことを指している。
泉と同じように、美輪も、相手のことを「自分」って呼ぶことが、あけりにはほほえましく思えた。
「ええ。中2まで……ちょうど、今の美輪ちゃんの歳までかな。病気に罹って乗れなくなっちゃったけど。……自転車は諦めざるを得なかったけど、しょーりさんのことは忘れられなくてね……今、こんな風に、普通に話せることが、うれしくてうれしくて。全部、薫さんのおかげ。」
あけりはそう言って、薫にほほ笑みかけた。
薫は苦笑して、肩をすくめて見せた。
「タイミングがずれてたら師匠が舅だったのかと思ってたけど……最悪の場合、師匠に君をかっ攫われてしまうって可能性もあったんだな。」
「……何で、自分ら2人とも……あんなヒトデナシのこと、そんなに慕ってるん?」
美輪の吐いた暴言に、あけりは眉毛をぴくりと上げたけれど、薫は鷹揚に笑った。
「師匠、優しいんだよ、あれで。口が悪いから誤解されやすいけど。……そういうところも、君と似てるね。さすが親子。」
「……。」
くやしいけど、美輪は、泉に似ている自覚があった。
反論できない美輪の瞳に涙が浮かんだ。
あけりの胸がきゅんと疼いた。
美輪の気持ちがわかりすぎるほどわかるような気がして……あけりは、とても他人事とは思えなかった。
その後、しばらく泉は姿を見せなかった。
以来、真面目に自転車の勉強を始めた美輪は、泉の訪れを楽しみにしている面々に申し訳なさすら感じ始めていた。