食事を終えて、泉と別れた後、すぐにドラッグストアで妊娠検査薬を購入して帰宅した。

薫だけでなく、母のあいりの待つ部屋に、あけりは陽性の結果のくっきり出た部分のみを持って戻って、見せた。


「妊娠……してるの……」

母は少女のように、ボロボロと泣いた。


薫もまた目も頬も真っ赤にして、あけりをぎゅっと抱きしめた。


……ほら。

こんなに喜んでくれてるのに……中絶なんか、絶対できない。


「ママ。私、産むから。薫さん、……これから、結果的に迷惑をかけるかもしれないけれど……助けてください。よろしくお願いします。」

あけりはキッパリそう言った。


もう、泣いてなんかいられなかった。

お腹の子を無事にこの世に産み出すまで……私だけが、この子を守れるんだから……。

強くならなきゃ。


あけりは、すぐに主治医に連絡を取った。

翌日、早速主治医の居る病院で産婦人科に罹った。

子供は元気だけれど……血液検査と既往症を見て、産婦人科医はすぐにあけりの主治医に電話をかけた。

2人はあけりと薫の意志を尊重し、万全の出産体勢を整えてくれることになった。


しかし、まだ妊娠初期にもかかわらず、あけりの身体には明らかに変調が見られた。

いろんな数値が一気に悪化し、自覚はないが両肺が炎症を起こしていた。

間質性肺炎、らしい。


「……入院……しましょうか。長いですけど。出産まで。」


胎児への影響を考えると、せっかく効果の実感できる新薬の服用もストップしなければいけない。

良化していた持病は、おそらく悪化の一途を辿るだろう。

再び酸素の吸引も始まった。

出産予定日まで半年以上ある。


「学校……1年休学したら……来年、嘉暎子ちゃんと一緒に卒業できるかな。」

とてつもなく先の話だけれど、たぶんあっという間だろう。

「ごめんね。薫さん。……また、披露宴……延期になっちゃった……。」

あけりはそう謝罪したけれど、薫はもちろん、薫の両親は、我が身と引き替えにしても出産を決意したあけりに対して感謝の念でいっぱいだった。


「……子供を産まれたら、家でも別荘でも新築してプレゼントしてくれるらしいよ。どこがいい?」

まるで暇つぶしに通販の雑誌をめくるように、薫は抱え切れない程の資料を持ってきた。