あけりは訳がわからず、吉永を見た。

吉永は肩をすくめて、あけりに苦笑して見せてから、呆然と突っ立っている母親に向かって言った。

「……覚えてますよね?山口あいりくん。彼女に生き写しだと思ったら、娘さんだそうですよ。」

その口調が何だか、皮肉っぽい。


「あいりさんの……。では……。」

吉永の母の顔色がサッと変わった。


「ええ。たぶん、そういうことでしょう。……こうして見ると、お母さんにも、似てますね。」

吉永はそう言って、苦笑した。



あけりは、再び吉永の母を見上げた。


今の……どういう意味?

このかたと、私が似てる?

え?

ええっ?


「あの……もしかして、親戚なんですか?……私達も。」

部長の彼氏さんだけじゃなくて、うちの母とも親戚なの?


あ。

関係ないことも、思い出したわ。

薫さんの母方のおばあさんのご実家も、この近辺なのよね?

……何だか……地縁ありまくり……。

実は、薫さんとも親戚だったりして。


そんなことをぼんやりと考えていると、吉永の母が息をついた。

「……正確なことは、あいりさんだけがご存じでしょう。私たちは、何も知らされませんでした。……でも……」

その目にみるみるうちに涙が浮かんだ。


びっくりして、あけりは思わず一歩、後ずさりした。

そっと薫が背後から肩を掴んで支えてくれた。

「あ……ありがと。……薫さん……。」

思わず、縋るように薫を見上げた。


薫は、うなずいて見せてから、吉永に向かって言った。

「すみません。やはり今日は失礼させてください。……先週、体調を崩して、まだ本調子じゃないんです。来週、改めてお伺いします。……それまでに、彼女のお母さんにもお話をうかがってきます。」


……薫さんも……同席してくれるの?

これは、家族の……というよりは、母と私の問題だけど……私1人じゃ感情的になってしまいそうなので、うれしい……。


「……そうやな。……あけりちゃん。驚かせて、ごめん。……身体……大丈夫?」

吉永が気遣わしげにあけりを見つめている。

その目にもまた、赤い……。


あけりは唇を噛んで、うつむいた。


……違う。

母方の親戚じゃない。

たぶん、このヒト……私の……本当の……、いや、遺伝子上の……血縁者なのだろう……。