「どうしはりました?急病ですか?」

背後から、おじさんに声をかけられた。


振り返ろうとして、くらっとした。

……貧血気味なのかもしれない。


「はあ。顔色が悪くて、震えてたので……。……あけりちゃん?ん?気持ち悪い?」

目を閉じてぐったりしているあけりの代わりに、薫が答えてくれた。


「いかんな。救急車呼びますか?」

救急車!?

や、別に、そこまでは……。

先週みたいに、肺から出血してる様子もない。

単に貧血だと思う……。


「……その必要は、ないです。ありがとうございます。……たぶん……少し休めば……落ち着くと思います……。」

あけりは、無理矢理目を開けて、そう言った。


目の前に立っていたのは、競輪選手の薫と変わらないぐらい堂々とした体躯の神職さんだった。

……マッチョな神主さんもいるんだ……。

もしかして、流鏑馬(やぶさめ)とかしはるのかしら。


ぼんやりそんなことを思って見上げていたら、立派な体躯の神職も……マジマジとあけりを見つめた。


綺麗な子だなあ……。

そんな心の声が聞こえてくるようで、薫はちょっとムッとして牽制した。

「車で来てるんで、病院、俺が連れて行きます。ご迷惑をおかけいたしました。失礼します。」

「……いや。今、車に揺られるのは、おつらいでしょう。社務所で少し横になって行かはったらどうですか?」

優しい言葉だけど、有無を言わさない口調だった。


学校の先生みたい……。

やたら姿勢もいいし、マッチョっぽいし……体育の先生っぽいわ。


あけりは迷わずうなずいた。

「はい。お願いします。……少しだけ……休ませてください。」

「……あけりちゃん……そんなにしんどいん?」


心配そうな薫に、あけりは無理矢理笑顔を見せた。


「大丈夫。少し休んだら、楽になると思う。」


「どうぞ。こちらへ。」

マッチョな神職は、薫と反対側から、あけりの腕を持って支えてくれた。

まるで、トレンチコートの諜報部員に捕獲された宇宙人のように、あけりは両側から引っ張られて、千鳥足でなんとか歩いた。