アパートの前に着いてその姿を見てビクッと背筋が凍る。


なんで、いるの?


「直之?」


「沙和…話したいことがあって待ってた」


「わたしに話したいことなんてない。言ったでしょ?わたしもう他に好きな人がいるの」


直之の横を通りかかるとき、直之が口角をあげて笑った。


「沙和の好きなヤツって、千里のこと?」


「チサト?誰それ。勘違いしてるんじゃない?チサトなんてわたし知らない」


そう言うわたしに直之はおかしそうにまた笑った。


「ハハハ!アイツ、沙和に本名すら言ってないんだ!」


頭の中で警告音が鳴り響いてる。


「神谷千里。沙和の大好きなセンリの本当の名前だよ」


「…どういうこと?」


「アイツ、千里は…」


直之の口から語られた話しに、もう頭がゴチャゴチャして気持ち悪いよ。