センリと出会った日もこんな雨の降る金曜日の夜だった。


『お姉さん、風邪ひいちゃうよ?』


婚約者に振られたその日、傘も差さずに雨でびしょ濡れになっていたわたしに傘を差して
くれたのがセンリだった。


あれからもう1年近くが経った。


センリと約束した訳でもない。


連絡先も知らない。


ただこうやってたまにふらりとやってきて、うちでわたしの作ったごはんを食べて一緒に眠るだけ。


そして目が覚めるともうその姿はなくて、布団には仄かなタバコの香りと温もりだけを残していなくなる。


野良猫のようなセンリを閉じ込めておくなんてできっこない。


わたしとセンリはそんなおかしな関係。