「人がいますよ…?」

「そんなにたいしたことではないでしょう」

「誰かに見られたらどうします?」

「徹夜明けでハイになっていたとでも言えば少なかれ納得してくれることでしょう」

「み、稔さんはそれでいいんですか?」

「僕は直子さんの意見が聞きたいです」

我ながら情けないとしか言いようがない。

てっきり忘れていると思ったハグの日を覚えていてくれて嬉しかった。

半ば強引に決めたその日を忘れていなかったことが嬉しかった。

「じゃあ、やりましょうか?」

私は両手を広げて、星崎さんを受け入れる準備をした。

「ええ」

星崎さんは首を縦に振ってうなずくと、両手で受け止めるように私を抱きしめた。