「何ですか、稔さん」

私も星崎さんのことを名前で呼んだ。

「駅まで送りますね」

そう言った星崎さんに、
「あっ、はい」

私はカバンを手に持つと、星崎さんと一緒にオフィスを後にした。

ビルを出ると、まぶしい太陽の光が徹夜明けの私たちの目を刺激した。

「あー、まぶしいですね…」

星崎さんは眼鏡越しの目を細めた。

「ホントですね…」

1週間は会社に泊まり込み状態だったので外の空気を吸うのはこれが久しぶりだ。

深呼吸をするように新鮮な空気を肺の中に入れた。

「直子さん、お疲れ様でした」

星崎さんが声をかけてきたので、
「稔さんもお疲れ様でした」

私は言い返した。