「どうかしましたか?」

星崎さんに声をかけられたので、私はハッと我に返った。

「い、いえ…お、美味しいですね」

「ええ、そうですね」

よかった、ごまかせた…。

星崎さんが声をかけてくれなかったら、間違いなく私は入社当時から感じている疑問を口に出すことになっていただろう。

――星崎さんって、彼女いるんですか?

いくら気を許している上司だからとは言え、こんなことを聞くのは失礼過ぎる。

でも…正直なことを言うと、彼のそう言った話題を聞いたことがなかった。

あくまでも人伝で――それも噂なのだが――聞いただけなのだが、ゲイじゃないかとか社内では彼女を作らない主義者だとか熟女好きだとかいろいろ言われている。